温かい液に満ちた島宇宙に包まれ
限りない夢を見始めようとした頃から
たとえ星間物質の一粒に足りなくとも
僕はあなたひとりの宇宙でありえた
そして僕は
太陽が燃えていることよりも
さらに確かな焦点をあなたに結び
森羅万象はちいさな風ぐるまのなかにあった
指さすだけで満ち足りた夢の方角をそれて
自由に眼が動き始めた時
巡り会ったバラ星雲の赤の喜悦に
懐かしい空間を遠く忘れ始めた
そしてその喜びの重さだけ
忘れない思い出が背につらく残った
つらいのは離れてしまった岸からの声
赤い星雲の雫の酔いか
すでに島宇宙の羊水は枯れ
あの時指し示した星の光はどこにも無い
母よ それからのあなたは
何を見つめようとして夜空を見上げるのか
枯渇した淋しさだけが広がってゆく

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