詩集「ただひとりで僕等と言う」
高安義郎
夕暮れの丘から何が見える?
黒ずんだほうずきの中の自分?
広がり病んだ宇宙の破片?
ああ 竹の子の一本も生えない宇宙
僕がみつめると
一つの星座は夜空一面の星にと広がり
僕が手折ると
それはリンドウとなって咲く
僕がいなくなれば
昼や夜は僕の世界にあいそをつかして来なくなる
きっと僕の変わりにねずみが生まれ
黒いほおずきは青くなる
ねずみのはなしを聞きましたか
桜は食べても仕方の無い霞だそうです
雲が不細工だから
宇宙はまだ子供なんだそうです
猫のいたずらは芸術遊びですって
青いほおじきはねずみの世界で
死ぬとミイラになる猫のわがままが
白いほおずきにしたいですって
青いほおずきには僕はいないし
宇宙は猫のゴムマリ遊びみたいなものだ
宇宙の外は凍っているし
陽の光さえ宇宙の外はまだ何もわからない
ねずみの悪さは誰も知らない
竹の子は
僕が死んでから生えようというのか