詩集「クラケコッコア」

生まれたばかりだと言うのに

この子はもう死ぬことばかりを考えています

レッドウッドの森がどこまでも続き

樹間に見える雲だけが

妙に早く行き過ぎるのです


―――crack-e-cock-wa

硝子質の空気を引き裂き

怪鳥の鳴く声がしました

静かな時間がヒタヒタと流れ

無言のまま交接する動物の

息苦しそうな呼吸音がします

人のため息だったかも知れません

風の音さえしないこの森の上を

時折怪鳥の片翼の影が通り過ぎます


歳を取ったら死ねばいい

けれど深い樹海の重みは

僕の心を押しつぶしそうなのです

この森にいたせめてもの記念のために

レッドウッドの幹に

鳥の声を刻んでみようと思いました

―――crack-e-cock-wa





                 

クラケッコッコア


高安義郎

高安義郎
――crack-e-cock-wa

高安義郎