先の曲がった尻尾を立て
裏切り行為は
猫族の甲斐性だとでも言いたげな顔をし
奴は庭の真ん中をゆっくり歩いていた
我が家の小さな庭は
野良猫の通り道になっていたのだ
縁先まで来て振り向くと
威嚇(いかく)して見せる私に一瞥(いちべつ)をくれながら
お前の悪事を暴露したぞといった素振りで
尻尾の先で風をからめ
物置のスレートの陰へと消えていった
私はバクテリアの憎悪か沸き立ち
猫の行く先を確かめたい衝動に駆られた
悪意に満ちたあの囗から
どんな悪口が流されるのか
焼いた手紙の灰を掻き立て
焼け残りを繋ぎ合わせているかもしれない
私は物置の陰に走り寄り
猫殺しも辞さぬつもりで覗き込んだ
不思議と言えば不思議なのだ
奴の入り込んだその先は行き止まりだし
隠し事さえ入る透き間も開いてはいない
あいつはどこに行ったのだ
猫を装った物の怪が
私に罠を仕掛けているのかも知れない
ところで私の
かわいい秘密たちはどうなったろう
本人の気付いていない失敗までも暴きたて
職場の奴等の噂畑に蒔き散らかして
もう発芽したりしてはいないか
辺りがこんなに静かなのも気にかかる
うらうらとした陽光の漂う庭は
平穏が覆(くつがえ)される前兆に思われてくる
木漏れ日の揺れる午後の縁先を
子猫のような風が通り過ぎていった
木漏れ日と猫