『詩集 千億の銀河』
神が

高安義郎


 

霊を信じられずとも

神の思し召しを信ずるならば

忠誠を誓って次の

明るい世界を願いもしよう

 

ところが猜疑に凝り固まったこの塊は

神の言葉を

飲み込めないでいるのであった

 

神と霊を信じ込むには先人達から

多少った諸説の壁が

社の前を遮(さえぎ)っている

私には

神仏の豪奢なお堂は

歴史のモニュメントにしか見えない

 

ならば私が

わたしを意識できるのは

単に記憶の産物なのか

 

疑問は巡って

行きつ戻りつ

お堂をくぐって後戻りして

自我とは経験の終着点だと

そんな思いつきの説明を

わたしに言い聞かせてみるが

声は空しく

ますます私は

わたしが分からなくなるばかり