意識の回帰
高安義郎

ふと気がついた

命は宇宙に漂うたった一つであったのではないか

一つが二つに四つに八つに分裂し

総ての命が己と呼ばれる個体となって

数千億の己になった

千億の命は総て己を意識し

意識の深さは記憶の量と質で変わるが

元はと言えば虚空から

たまたま弾けた一個の己の欠片であった

 

さすれば私の『己』とは

宇宙の意識そのものなのではないのだろうか

あなたも私も

元は一つの宇宙の意識だったのだ

私がわたしを考えて

あなたがあなた自身を思う

その思いとは

私がわたしを思う思いと

同じ宇宙の意識の回帰に他ならない

 

生命の維持装置に支えられ

そこにたまたま芽生える疑問

それが己と言う意識

脳という記憶統合システム系を

持ち合わせて生まれた者の

単一無二の帰結思考だ

意識を持つに至った脳は

まばゆい陽光を浴びながら

いつかある時思うのだ

これが『わたし』というものなのかと

 

そう思ってもなお

私が何故(なにゆえ)わたしなのかが付きまとう

肉体維持装置が壊れれば二度と私は

わたしを思い出すことはない

やがて宇宙が消滅すれば

総ての己が消滅し

己を思う者もない

意識の回帰は消滅するのか

本当に宇宙は己を意識しているのだろうか