(作曲家 中西覚氏により歌曲となる)       


           
百姓の独り言                                                           

                                       
        

         


          おら家の馬はいい栗毛だで

          丈夫な子をたんと成した

          だでおら家じゃ倅に嫁がもらえた

          本家の家では牛が達者で

          嫁さんがうんと餓鬼ば育てた


          馬だの牛だのは死ぬとどこさ行くだべか

          悪いことした人間は馬や牛になるちゅうが

          おら家を人並みにしてくれた馬っ子達は

          間違えなく極楽さ行くんだべ

          極楽じゃあ御釈迦様がニコラ ニコラして

          今度生まれる時は

          人間がいいかや 鳥がええかやちゅうて

          そりゃやさしく聞いてくれるんだべな

          だども人間になっても

          悪いことすればまた馬になる

          馬になっても良く働けばまた人間になれる

          なるほど そうすると

          人間になるには馬になるのが一番手堅い

          その馬になるには人間の時好き勝手して

          そうやってぐるぐる回っていればいいんか

          してみると御釈迦様もやさしい方だでや

          けんどこんこつは他人に話しちゃなんね

          これが悟りっちゅもんかも知んねだで

          おらはなでまたこったら頭がいいんだべか

          ともかく庄屋様と地頭様の言うことを聞いて

          言い残しの所をちょいと知らんふりして

          馬っ子の尻さ回って面白おかしく

          塩梅よく好き勝手をやるとしべえ

          いい馬に生まれるには表向きは正直者でなきゃならん

          えばり散らしちゃぶち壊しだべ

          だけんどもよ

          いつもあんなにえばれる庄屋と地頭のダンナは

          あれはやっぱし

          御釈迦様の生まれ変わりだんべかな