高安義郎
初夏夏の夜半流れ星を見た
私が生を受けたのも
偶然初夏のことだった
君が生を受けたのも
君がこの町にやって来たのも
誰の計画でも指示でもなかった
君を好きになったのも
私に答えてくれたのも
雲がヒツジの形になって
西の空に消えたのと
同じ様に総てが偶然だったのだ
二人の間に生まれた子どもは
どの子であってもかまわなかった
この子を待っていたわけではない
この子が偶然生まれただけだ
それなのに生まれてみれば
どの子もこの子も愛おしくって
生まれてくれたことに感謝さえする
それは偶然への感謝だなどとは
誰もが言わない不文約
友よ
私は君を探していたわけではない
君のような人を探してはいたが
偶然君は私の前に
私の為のように現れた
これを神のと思い感謝もしよう
偶然立ち止まった切り株に
コオロギがっていた
私の姿に
捕って食おうと身がまえていた小鳥が逃げた
コオロギはおそらく私を
神の思し召しとして感謝もしよう
感謝をされて
私は少々面はゆいばかり
自由な想像は傍目には可愛い
命の世界というものは
偶然降り敷く縦糸に
偶然色の横糸で織る綾錦
偶然こそが命の広場
偶然なればこそ許せる世界
偶然なればこそ貴重な命
そんな事を私は偶然
思いついたのであった