詩集「ただひとりで僕等と言う」

秋風

高安義郎



空はポッカリあいた頭のように青い

山の実は誰かに見つかり赤く染まった

一株のすすきの穂が

やっと気づいて風にゆれる

風は耳の奥から吹くのだろうか


あの山をもう少し探してみたい と

ささやいたのは誰だったろうか


空はあまりにも待ちどおしく光り

赤い実はそろそろカラスを呼びはしないか

山道に木の葉の一枚ずつ去ったのは誰だったろう


風は空と僕の鼻をつなぎ

草むらに何か伝言していったようだった